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2019年5月 3日 (金)

(1875) あの日のように抱きしめて

【監督】クリスティアン・ペツォールト
【出演】ニーナ・ホス、ロナルト・ツェアフェルト、ニーナ・クンツェンドルフ
【制作】2014年、ドイツ

戦争で傷ついた顔を手術で治した女性が、それを妻と気づかぬ元夫に再会してからのできごとを描いた作品。

戦争で損傷した顔を手術で復元した女性歌手ネリー(ニーナ・ホス)は、ピアニストの夫、ジョニー(ロナルト・ツェアフェルト)を探す。ジョニーは音楽酒場で働いていたが、妻が死んだと信じ込んでいるジョニーは、ネリーのことを妻だと気づかない。仕事に困っているように見えたネリーにジョニーは話しかけ、ネリーが妻になりすませば遺族の遺産を手に入れられるという話を持ちかける。ネリーは自分が本当の妻だということを隠したまま、彼との奇妙な共同生活を始める。ジョニーは、ネリーの書いた買い物のメモをネリーに渡して筆跡を覚えさせようとしたり、買ってあげたパリ製の靴や赤いドレスを渡して歩く練習をさせる。ネリーに付き添っていた弁護士のレネ(ニーナ・クンツェンドルフ)は、レネを捨てたジョニーを憎んでいたが、ネリーはジョニーが自分を助けようとしていたと信じようとしていた。古い友人の待つ街に戻る前の日、ネリーがレネの家に戻ると、レネは自殺してしまっていた。彼女の残した手紙には、ジョニーはネリーとの離婚を成立させていたことが明かされていた。
列車に乗って街に戻ったネリーは、友人と先に街に入っていたジョニーと再会。二人は偽りの再会を果たすと食事をともにする。ネリーは突然、「来て」とみんなをピアノのある部屋に呼び、ジョニーに「スピーク・ロウ(優しくささやいて)」を弾いてくれと頼む。伴奏に合わせ、最初は全く音程をとれずにつぶやくだけだったが、やがて見事な歌声を披露する。驚くジョニー。ネリーの腕には囚人番号の入れ墨が刻まれていた。ようやく彼女が本当の妻であることを知ったジョニーは、驚きのあまりピアノを弾くこともできず、呆然とネリーを見つめる。伴奏が途切れ、一人で歌を歌い終えたネリーは、声を失ったジョニーと友人達を背に、部屋を後にするのだった。

やや設定に無理があるような気もして、序盤は若干、退屈だったが、中盤以降はこの二人にはどのような運命が待っているのか、と引き込まれた。そしてそれは、決してハッピーエンドではなかった。多くは語られないが、おそらくジョニーは、ネリーをナチに売って自分のみの保全を図ったのだろう。そうではないと信じようとしていたネリーは、最後まで夫に裏切られ、それでも自分に言い聞かせるように、レネに向かって夫は妻を愛していると言い続ける。真実から目を背けようとしていた。かし離婚届の存在が、現実を明らかにする。真実から目を背けようとしていたネリーが、気持ちの整理を付けるかのように、思い出の曲を歌い上げるラストシーンが印象的だった。
サインをほぼ同じように書けても、口づけをかわしても、ジョニーは「まるで妻のようだ」のような陳腐なセリフは吐かず、ただ驚いたり思わず二度見したり、という程度。この辺りの演出は抑制が効いていてよかった。

【5段階評価】3

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