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2019年5月26日 (日)

(1890) リップヴァンウィンクルの花嫁

【監督】岩井俊二
【出演】黒木華、Cocco、綾野剛、原日出子、地曵豪
【制作】2016年、日本

幸せを手に入れようともがく女性の数奇な運命を描いた作品。

聖林中学の臨時教師をしている皆川七海(黒木華)は、お見合いサイトで彼氏(地曵豪)を見つける。彼の名は鶴岡鉄也。彼も教師をしていた。七海は「クラムボン」というハンドルネームで、彼氏がネットショップの買物のように簡単に見つかったとネットでつぶやく。二人は結納を済ませるが、実は七海の両親は離婚しており、それを伏せて臨んだ結納だった。結納を済ませ、披露宴の相談をしていた二人だったが、七海は結婚披露宴の招待客が少ないと鉄也に言われてしまう。また、彼女は声の小ささを生徒にからかわれ、生徒の用意したマイクを使って授業をしたことが原因で学校を首になっていた。そのことや、結納の日の会話で、鉄也の母親(原日出子)が七海が主婦に専念しないことを快く思わない態度だったことから、教師の正式採用の夢を諦めるが、鉄也は自分に相談がなかったと七海を責める。
七海は、ランバラルというネット住民に、披露宴に偽物の親族や友人を招待するサービスがあることを教えてもらい、何でも屋の安室行舛(綾野剛)という男に会って披露宴代理出席サービスを依頼する。そのおかげで、披露宴はつつがなく終了するが、鉄也は、クラムボンという名義で、彼氏が簡単に手に入ったなどと書き込んでいる人物がいることを七海に話す。七海を少し疑っているようだった。
新婚生活に入った二人。七海が朝、鉄也を送り出して部屋を掃除していると、床に女性もののピアスが落ちているのを発見。七海は安室に相談する。安室は浮気調査を30万円で引き受ける。
ある日、夫の不在中に、七海の家に一人の男(和田聰宏)が尋ねてきて、鉄也が自分の恋人と浮気をしていると言って部屋に上がり込む。男は鉄也の卒業アルバムを持ってこさせ、そこに写っている女子生徒と浮気をしていると説明。七海はショックでへたり込んでしまい、男はいったん退散する。男は七海をホテルに呼び出し、彼女に肉体関係を迫る。七海はトイレにいったん入り、慌てて安室を呼び出す。安室は現場に向かうが、実はホテルにいる男と安室はグルだった。安室は手際よく部屋の中の隠しカメラをしまい込み、さも男を追い出したかのような顔で七海を安心させる。
鉄也の父親の通夜に出席した七海は、鉄也の母親のカヤ子(原日出子)に呼び出され、両親が離婚していたことを黙っていたことや、親戚を代理出席させていたことを責めると、七海がホテルで男と会っていた映像を突きつけ、七海を追い出す。七海は泣きながら家に帰り、一夜を明かす。翌朝、鉄也が電話で七海を責めたため、七海も言い返し、アルバムの写真を確認するが、部屋にやってきた男が示したはずの女子生徒の写真はなくなっていた。鉄也に三行半をたたきつけられた七海は、行く当てもなく部屋を出るしかなく、混乱した七海は安室に電話で助けを求め、何とか狭いホテルにたどり着く。仕事のない七海は、住み込みでホテル清掃のアルバイトを始める。安室は、七海に会いに来る。安室の調査によると、鉄也はマザコンで、カヤ子と週に2回は会っていたこと、カヤ子は七海の留守中に二人の家にも来ていたことを報告。七海はカヤ子の依頼した別れさせ屋にはめられたのだ、と説明する。実はその別れさせ屋の仕事自体を安室が引き受けているわけだが、七海はそれを疑いもしない。
安室は七海に披露宴代理出席のアルバイトの話を持ってくる。断るすべもなくそれに参加した七海は、自分の姉役を演じた里中真白(Cocco)と知り合い、意気投合する。彼女は女優をしているということだった。安室はさらに、月100万円稼げる住み込みのメイドの仕事を七海に紹介。そこは大豪邸で、宴会で大騒ぎをしたあとのように屋敷の中は散らかっていた。もう一人、住み込みがいると聞かされていた七海だったが、それは真白だった。七海は真白との再会を喜ぶ。真白は朝早くから女優の仕事に出る日々だったが、ある日、真白が眠り込んでいるところに、呼び出しの電話がかかる。真白は熱を出しており、仕事の関係者の恒吉冴子(夏目ナナ)が屋敷にやってくる。真白の仕事は女優と言ってもAV女優で、大豪邸は真白が気に入り借りているものだった。七海は安室に電話をして自分の雇い主は真白なのかと問いただす。安室は誰が雇い主かは言えないと言いながら、クライアントの依頼は友達がほしい、だったと明かす。七海は真白に、こんな生活はやめて二人で別の所に住もうと涙を流して話す。真白は、この涙のためなら何だって捨てられる、命だって、と言って七海の提案を受け入れる。
家探しをした二人は、ウェディングドレスのお店を見つけ、ドレスを着たまま屋敷で一夜を明かす。二人はベッドの上で横になり、真白は、世の中は幸せと優しさに満ちていて、それがあまり簡単に手に入ると自分が壊れてしまうから、自分はお金を払うんだ、と話す。七海の優しさは真白には辛いほど嬉しいのだった。真白は七海に、一緒に死んでくれと言ったら死んでくれるか、と問いかけ、七海は優しく頷く。
翌朝、真白は冷たくなっていた。屋敷に葬儀屋と安室が現れる。真白は、今夜死ぬ、と安室に連絡を入れていた。自殺だった。葬儀が営まれ、七海は真白の仕事仲間から、彼女が乳がんだったこと、治療をすれば死なずに死んだのに、彼女は体にメスが入ったら里中真白として仕事ができなくなるからそれを拒んでいたと聞かされる。
安室と七海は真白の母親(りりィ)の家に向かう。母親は、縁を切った真白がポルノ女優をしていたことを知り、一度だけ居場所をつきとめて、顔を殴るだけ殴って帰ってきたという話をすると、やおら服を脱ぎ始め、「人前で裸なんて、やっぱり恥ずかしいだけだ」と言って涙を流す。安室もたまらずに号泣。全裸になって恥ずかしさをともにする。七海は母親の出してきた焼酎をあおり、泣きながらおいしいです、と言って母親におかわりをもとめる。三人は泣き、そして笑いながら真白を偲ぶ。
七海はこじんまりとしたアパートに転居。安室は引越祝いとして大量の粗大ゴミの家具を持ち込み、七海に好きな家具を選ばせると、去って行く。七海はベランダに出て、これまでのことに思いをはせるのだった。

岩井俊二監督が、黒木華を主演にすることを想定して作った小説がもとになっている。決して悪事を働こうとしたわけでも、身分不相応な幸せを得ようとしたわけでもなかった七海が、不幸に陥り、そこから這い上がる中で一人の女性と知り合い、そして彼女を失う。
なんと言っても、真白の母親の部屋での号泣シーンが感動的。こういう訳の分からない感情に涙を流すということが、自分にとって初めてで得がたい経験だった。黒木華の存在感を存分に堪能でき、文学性も感じられるいい作品。

【5段階評価】5

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