(1866) ターミナル
【監督】スティーブン・スピルバーグ
【出演】トム・ハンクス、キャサリン・ゼタ=ジョーンズ、スタンリー・トゥッチ、クマール・パラーナ
【制作】2004年、アメリカ
パスポートを失効して空港で足止めを喰らうことになった男の運命を描いた作品。
クラコウジア国民のビクター・ナボルスキー(トム・ハンクス)は、ニューヨークのジョン・F・ケネディ空港の入国審査でパスポートが無効と判断される。クーデターで無政府状態になったのだ。彼はアメリカに入国することも母国に戻ることもできなくなり、トランジットエリア内で過ごすことになる。ほとんど英語がしゃべれなかったビクターは、自国語と英語の二カ国語分の旅行ガイドブックを並べて読んで英語を勉強。カートを返却してデポジットの返金を受け取ったりしながら、ターミナルの中で暮らし始める。大工仕事の経験があった彼は、内装工事の現場監督に能力を見いだされ、空港内で仕事まで始める。ある日、彼は美人キャビンアテンダントのアメリア・ウォーレン(キャサリン・ゼタ=ジョーンズ)と知り合う。彼女は妻帯者と恋愛関係にある恋多き女で、一人でいることのできない性格。彼女はビクターを空港の外の食事に誘うが、外に出られないビクターは断る。
空港の国境警備主任のフランク・ディクソン(スタンリー・トゥッチ)は、昇進を控えており、空港内で問題を起こしそうなビクターが空港から出ていくことを望むが、ビクターは空港内の店舗の職員や清掃員などとも打ち解けていく。ビクターは自分からアメリアをデートに誘い、空港の中で仲間の協力を得てデートをする。
ようやくクラコウジアの無政府状態が収まり、ビクターは仲間と喜び合う。ビクターは、自分の父親が愛していたジャズミュージシャンのサインを手に入れるためにアメリカに来ていた。フランクは意地になってビクターのアメリカ入国を阻止しようとし、ビクターを脅して入国を諦めさせようとするが、空港内の仲間達が彼を空港の外に送り出す。ビクターは念願のサインを手に入れると、ようやく家に帰ることを決めるのだった。
スティーブン・スピルバーグ監督作品だけに、相当期待をして観たわけだが、正直に言って期待外れの内容だった。出だしで思ったのは、トム・ハンクスが非英語国民の役をやるのはいいとして、そのうち英語がうまくなったりしないよな、ということだったが、案の定、本を並べ読むという勉強法で英語をマスター。英語民は誰でも英語をしゃべれるようになると思っているらしい。
二番目にがっかりしたのは、ビクターがずっと持っているピーナッツ缶の秘密。父親が集めていたジャズプレイヤーのサインだという。そんなもの、集めようが集めまいが、コレクター以外には全くどうでもいいこだわりである。目的に切迫感がなかった。
そして設定に無理がある。国が無政府状態になることはあるかもしれない。だからといって、その国民がたった一人、アメリカの空港で足止めを喰らう。そのことに政府が何の対処もせず、空港内で好きにさせている。普通は飢えて倒れるだろう。さらに、フランクがビクターを敵視する理由が弱い。なんでこのフォレスト・ガンプを彷彿とさせる人畜無害な男に、敵愾心を燃やすのか理解できず、感情移入できない。実際、大してフランクに権限があるわけでも超悪者なわけでもないので、空港のスタッフたちがビクターを応援する側に回るという展開を生み出す仕掛けとしては、なんとも貧弱。
また、ヒロインのアメリアの人物像に魅力がない。無垢なビクターに惹かれ、現実的で冷淡だった女性が心の氷を溶かして、というならわかるが、不倫もいとわないただの男好き、年齢も39歳で微妙なお年頃。恋のさや当てに興奮しない。どうでもいい。せっかくのキャサリン・ゼタ=ジョーンズの美貌がもったいない。
ほかにも、空港の中で勝手に内装工事をはじめて、捕まるどころか採用されたり、英語ができないのにビザ手続き係の女性とコミュニケーションをとってキューピッド役を果たしたり、と、大味な設定で何でもありなことが多いので、空港の中にずっといるしかない、という本来なら切迫した状況が、どうにでもやっていけるでしょ、何ならずっといたって問題なさそう、と思えてしまうのがなんとも残念だった。
【5段階評価】3
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