(1789) 野菊の墓
【監督】澤井信一郎
【出演】松田聖子、桑原正、加藤治子、樹木希林、村井国夫、赤座美代子
【制作】1981年、日本
伊藤左千夫の小説「野菊の墓」の映画化作品。15歳の若者と17歳の少女の純愛を描いている。
一人の老人(島田正吾)が自分の少年時代を回想する。15歳の少年、政夫(桑原正)は、住み込みで働く少女、民子(松田聖子)と子供の頃から仲よくしていたが、使用人のお増(樹木希林)や政夫の兄(村井国夫)の嫁の初子(赤座美代子)らは、年頃の二人が仲よくしていることを快く思っていなかった。政夫の母親のきく(加藤治子)は仲睦まじい二人を微笑ましく思っており、たびたび二人だけで仕事をする機会を与えていた。
祭りの日に綿摘みに言った二人は、道中に野菊を見つける。政夫は民子は野菊のような人だ、自分は野菊が大好きだ、と間接的に思いを告げる。民子もまた、政夫さんはりんどうのような人で自分もりんどうが好きだ、と返す。二人は夜遅くに帰宅。さすがのきくも心配し、早めに中学校に通うよう政夫に命じる。政夫は民子に手紙を託す。そこには民子と離れたくないという政夫の正直な思いが綴られていた。
政夫が不在の間に、民子には縁談があてがわれ、きくに言い含められて民子は泣く泣く承諾させられる。民子を恋敵と思っていたお増だったが、民子が不憫でたまらず、仕事をやめて政夫に民子がかわいそうだと告げに行く。婚礼の日。政夫は婚礼の行列を追いかけ、止める兄を振り払って民子に一輪のりんどうの花を手渡す。民子はそれを受け取る。
嫁ぎ先で民子は姑から厳しすぎる指導を受け、重労働の末、倒れてしまう。流産だった。政夫はきくに家に呼び戻され、民子の死を知らされる。民子は亡くなる際、手に政夫の手紙と押し花になったりんどうの花を握りしめていた。きくは民子の政夫への思いを知り、二人を引き剥がしたことを政夫に泣いて詫びる。老人となった政夫は、民子の墓の前で改めて祈りを捧げるのだった。
松田聖子が19歳の頃の初主演作品。純愛もので、恋に臆病で不器用な若い二人のやりとりが初々しい。民子の天真爛漫な笑顔が印象的である一方、最後はヒロインの流産による死という悲劇が訪れる。相手役の桑原正は、本作で「新人」とクレジットされているが、その後、芸能界を進むことはなかったようで、なんとも意外である。
【5段階評価】3
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