(1788) 顔
【監督】阪本順治
【出演】藤山直美、佐藤浩市、豊川悦司、大楠道代、牧瀬里穂、岸部一徳、國村隼
【制作】2000年、日本
殺人犯となった中年女性の逃亡生活を描いた作品。
自閉症気味の精神障害を持つ中年女性の吉村正子(藤山直美)は、母親(渡辺美佐子)の営むクリーニング店の2階に閉じこもり、服の直しの仕事をしていた。妹の由香里(牧瀬里穂)は姉とは似ても似つかない美しい容姿。男性との経験もない姉をさげすんでいた。ある日、母親が仕事中に倒れて急死。それに気づかず2階にいた姉を由香里は許せず、悪態をつく。正子は由香里を絞め殺してしまう。
自殺を図るも未遂に終わった正子は香典をかき集めて家を出る。警察の捜査が始まるが、その晩、阪神淡路大震災が起き、どさくさの中、正子の逃亡生活が始まる。家に引きこもっていた正子は、大人になってからの写真が全くなく、それが幸いして捜査は難航した。浮気をして家を出て行った父親を訪ねようとした正子は、近くの交番を訪ねるが、警官は不在。そこにやってきた男(中村勘九郎)に無理矢理連れ出され、幌の付いたトラックの荷台で襲われる。必死で拒絶する正子は恐怖から吐いてしまい、男は萎えてしまう。しかし、正子は体が熱くなり、そう告げたため、結局男に強姦される。それは正子の初体験だった。正子は香典の封筒を3つほど渡し、立ち去る。
立ち寄ったラブホテルに務めることになった正子だったが、放漫経営の店主(岸部一徳)は借金地獄で自殺。正子は警察に追われるように逃走。駅に逃げ込んだ正子は思いつきで九州に向かう。電車の中で知り合った男(佐藤浩市)を追うように別府で降りた正子だったが、結局行く当てもなく、空き家の中で首つり自殺を図るが失敗。パニック状態になって泣き叫んでいるところを、クラブのママの律子(大楠道代)に助けられる。律子の家には元ヤクザの弟、洋行(豊川悦司)がいた。ホステスとして店に出るようになった正子は、店の常連の男(國村隼)に惚れられる。洋行は男に金をもらい、律子の留守を狙って店の2階の部屋で正子を襲わせる。正子にとって2回目の強姦だった。はじめは必死で逃げる正子だったが、またも体が熱くなり、男を受け入れる。しかし男の妻が店に現れ、男は連れ出される。正子はそれを忘れるために店で明るく振る舞う。正子は電車で会った男に再会し、店に誘う。男は会社を首になり、持ち出した顧客データをネタに会社から金を脅し取ろうとしていた。正子は正体なく飲んで酔った男に幸せそうに寄り添う。男は息子を連れて店を出、真面目に生きる決意をする。
洋行はヤクザに追われていた。姉に迷惑をかけずにけじめを付けるため、正子に姉を頼むと言い残し、洋行はヤクザの元に向かい、殺されてしまう。店に警察が来ることを恐れ、正子はまたも逃げ出す。離島に逃げ込んだ正子だったが、ついに正子のクラブでの写真が警察に渡り、島の子供が正子に気づく。正子はおびえて逃走する。町の警備団や警察が正子を探す。捜査員の一人が海を見つめると、泳げない正子が浮き輪を付けて、必死で岸から泳いで逃走しているのだった。
福田和子事件を素材とした女性殺人犯の逃走劇。殺人犯とは言っても、妹にさげすまれたことによる衝動的な犯行という意味では、被害者とも言えるだろう。男に裏切られることもあれば、女に助けられもして、正子が人間性を取り戻していく。しかし海を泳ぐ正子の形相にはまだどこか幼稚さが見て取れ、観ている者を、うまく逃げてこの逃避行が続いて欲しい、というような気にさせるのだった。
【5段階評価】4
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