(1610) チャイナタウン
【監督】ロマン・ポランスキー
【出演】ジャック・ニコルソン、フェイ・ダナウェイ、ノア・クロス
【制作】1974年、アメリカ
カリフォルニアのダム建設を巡って起きた事件を追う私立探偵の活躍を描いた作品。
ギテス(ジャック・ニコルソン)はロサンゼルスのベテラン私立探偵。なじみのカーリー(バート・ヤング)の妻の浮気調査を片付けた彼のもとに、水道局長のホリス・モウレー(ダレル・ツワーリング)の妻を名乗る女性(ダイアン・ラッド)が現れ、ホリスの浮気捜査を依頼する。ホリスは農民の求めるダム建設に反対している人物。ギテスはホリスを尾行。ホリスはひからびた川で、白馬に乗った地元の少年と話し、地図上で何かを確認すると、海辺に向かう。夜になり、ギテスは崖の上からホリスの様子を監視。すると突然、崖の上にあるパイプから大量の水が流れ出し、海に流れ込む。海辺にいるホリスは、それを確認しているようだった。
車に戻ったギテスは、車のダッシュボードの中にしまった大量の懐中時計の一つを取り出し、止まっている車のタイヤの下に置く。時計が踏まれて動かなくなった時刻が、車の動き出した時間というわけだ。ホリスは夜中の2時頃まで動き回っていたようだ。同僚のウォルシュ(ジョー・マンテル)は、ホリスが杖を持った老人と口論している様子を写真に収めていた。二人は口論中に「アップル・コア(リンゴの芯)」と言っていたという。そこに、外で張り込み中のダフィー(ブスース・グローバー)から連絡が入る。合流したギテスは、ホリスが若い女性(ベリンダ・パルマー)と親しそうに公園の池のボートに乗っている場面を写真に収める。二人はマコンド・アパートでも親しそうに抱き合う。ギテスはそれも写真に撮る。
翌日、その写真は新聞に載る。ギテスは散髪屋でそれを知る。隣の客が記事を罵倒。ギテスはその客に激高する。ギテスは写真が新聞に載ることを知らなかったのだ。事務所に戻ったギテスのもとに、ホリスの妻、イブリン・モウレー(フェイ・ダナウェイ)が弁護士とともに現れる。最初の女性依頼者は偽物だったのだ。弁護士はギテスに告訴状を渡す。
ギテスはホリスのオフィスを訪ねるが、ホリスは不在。受付嬢の言葉を無視してホリスの執務室に入ったギテスは、机の引き出しを捜索。特にめぼしいものはなかったが、大きな図面に「オーク・パス貯水池 火曜夜 7水路使用」という走り書きがあるのを発見する。そこに副局長のイェルバートン(ジョン・ヒラーマン)が現れ、ギテスは副局長室に通される。副局長によれば、ホリスは火遊びをするような男ではないとのこと。ギテスは副局長の名刺を何枚かくすねて部屋を出る。エレベータホールに向かうと、ギテスの知り合い、クロード・マルビヒル(ロイ・ジェンソン)がいた。ギテスは彼が気にくわないようで、保安官時代に密造酒の輸入にからんでいたと彼の過去をからかって副局長に紹介し、立ち去る。
ギテスはホリスに会いにモウレー宅に向かう。執事のカーン(ジェームズ・ホン)に待たされている間、庭に出たギテスは、池の中に何か光るものがあるのを見つける。それをとろうとしたところにイブリンが現れ、夫は不在だと言う。ギテスは自分ははめられたと告げると、イブリンは深追いしてほしくないのか、あっさりと告訴を取り下げる。ギテスは行方不明のホリスと若い女性、そして誰がホリス夫人を騙ったのかの謎を追うと宣言。夫人は朝から乗馬をしており、この日は夫に会っていなかった。
ギテスは副局長の名刺を使ってオーク・パス貯水池に入り込む。そこには警察のローチ(リチャード・バカリアン)とルー・エスコバル(ペリー・ロペス)がいた。ギテスが、ホリスに話を聞きに来たと目的を言うと、ルーはホリスはあそこにいると告げる。ホリスは遺体となって水中から引き上げられているところだった。警察署に戻ったルーはイブリンに事情を尋ねる。イブリンは、ルーに、ギテスに調査をさせていたのだろうと聞かれると、なぜかそれを否定しない。ギテスはうまくイブリンに話を合わせ、その場を去る。イブリンは感謝し、小切手を送ると言って車で走り去る。まるで口止め料のようで、ギテスは不可解さを感じる。遺体安置所に戻ったギテスは、ホリスの遺体が傷だらけであることを確認。さらに、排水管で暮らしていたリロイ・シュハートという男がロサンゼルス川のホーレンベック橋の下で溺死体で発見されたという情報を得る。そこは、ホリスが白馬の少年と話していた場所だった。ギテスは少年に話しかけ、ホリスが少年に水がいつ来るかを尋ね、少年は毎晩違う場所に流れ込むと答えたことを知る。
ギテスは深夜のオーク・パス貯水池を再度捜索。突然の放水で水浸しになり、這々の体で立ち去ろうとすると、クロードと、ナイフを持った小柄な男(ロマン・ポランスキー)に呼び止められる。クロードがギテスの腹を殴って体を押さえつけ、小男はギテスの鼻の穴にナイフを突っ込み、それを跳ね上げて片方の鼻を切る。これ以上嗅ぎ回るな、という脅しに、ギテスは分かったと答えるしかなかった。
しかし事務所に戻った彼は、黒幕を明かそうと意気込む。その彼のもとに、モウレー夫人を騙ったアイダ・セッションズ(ダイアン・ラッド)から電話が入る。彼女はホリスの死亡に驚いており、依頼主の名や住所は教えなかったが、新聞の死亡記事に一人載っていると告げる。ギテスは記事を切り取り、保管。彼はイブリンに会い、情報を引き出そうとするが、彼女は何も語ろうとしない。ギテスは封筒にあったイニシャルのCは何かと尋ねる。イブリンは旧姓がクロスだったと答えるが、それ以上は何も話さないのだった。ギテスはイブリンに、ホリスは貯水池の水が抜かれていることを知ったために殺されたのだ、とイブリンに告げてその場を後にする。イブリンは思わずギテスを呼び止めるが、ギテスはそれに気づかず車で走り去る。
再度、水道局に向かったギテスは、受付の壁にノア・クロス(ジョン・ヒューストン)という杖をついた男の写真が数多く飾られているのを見つける。受付嬢によれば、かつて、ノア・クロスとホリス・モウレーは、市の給水権を握る水道の共同所有者で、ホリスが水道を公共所有にしたのだという。ギテスは、局長となったイェルバートンに会い、彼がアイダを使ってホリスをはめたのだろうという推理を展開する。イェルバートンはそれを否定し、オレンジ畑の灌漑のために多少の漏出はあると説明する。
ギテスが事務所に戻ると、イブリンが待っていた。イブリンは主人の死と関係者の調査をギテスに依頼する。ギテスが、イブリンの父はノア・クロスだと告げるとイブリンは動揺し、吸いさしのたばこがあるのに新しいたばこに火をつけてしまう。イブリンは父とホリスが仲違いしていたと説明する。
ギテスはノア・クロスに面会。ギテスはホリスが殺されたのではという仮説を披露するが、ノアは否定。ノアはギテスから事件の捜査主任がルーであることやルーの性格を聞いたあと、夫を失った娘につけ込まないでほしいと言って、イブリンの依頼を中止してほしいと告げる。ノアは、倍の報酬と1万ドルのボーナスでホリスの愛人を探すよう依頼。ギテスはそれには答えず、ホリスに最後に会ったのはいつかノアに尋ねる。覚えていないと答えるノアに、5日前にパブで口論していただろう、写真があるとギテスは告げる。ギテスに背を向けたノアの顔から笑みが消える。ギテスは口論の原因を聞き出し、ノアがしぶしぶ娘の夫の浮気の件だと告げるのを聞くと、ノアの依頼に応じることを決める。
ギテスは登記所を訪ねる。オレンジ畑のある谷の土地は、大半が売買されていた。ギテスは係員から定規を借りると、咳払いで大声を出しながら、所有者の名前のリストをこっそり破りとる。ギテスはオレンジ園を見に行くが、突然、農民に襲撃される。農民たちはギテスが水道局の手先か不動産業者ではないかと疑っていた。農民によれば、オレンジ園は灌漑どころか、貯水槽を爆破され、井戸には毒を入れられたというのだ。ギテスは農民に殴られ、気絶する。目が覚めると、目の前にイブリンがいた。農民が呼んだのだった。ギテスはイブリンの車の中で推理を展開。ホリスが建設に反対していたダムは、オレンジ畑のある谷に水を供給するためのもので、谷の土地が大量に買い占められていること、ホリスはそれを知って殺されたのだということ。土地所有者の名前を改めて確認したギテスは、それが死亡記事に載っている死亡者の名前であることに気づく。ギテスとイブリンは記事を頼りにマル・ビスタ介護施設に向かう。そこには、記事に名前の載っている老人が入居していた。ホームはノア・クロスの息のかかったアルバコア・クラブの関連施設だった。そこにクロードが現れる。ギテスはクロードに不意打ちを食らわせ、施設から逃走する。ギテスとイブリンはモウレー邸に戻る。警察時代、ギテスはチャイナタウンを担当していたことをイブリンに話す。二人はその夜、結ばれる。
ベッドで二人が語らっていると、電話が鳴る。電話に出たイブリンは、理由を告げずに家を出る。不審に思ったギテスは車で尾行。イブリンの向かった家にいたのは、モウレー家の執事カーンと、ホリスの愛人とされていた女性だった。ギテスはイブリンの車で待ち伏せ、イブリンから話を聞き出す。イブリンは、ホリスの愛人は自分の妹だと説明する。
一人で自宅に戻り、ベッドで横になったギテスのもとに、電話が入る。声の主は男で、アイダが会いたがっていると告げる。ギテスが事務所で会うと言って電話を切るとまた電話が鳴り、彼女の住所をギテスに教え、会いに行けと告げる。翌朝、ギテスはその住所に向かう。ギテスが家の中を調べると、殺されたアイダを発見。そこには先客がいた。ルーとローチだった。ルーは、アイダの依頼を受けてホリスを尾行していたギテスが、ホリス殺害の犯行現場を撮影しており、犯人はイブリンではないかと邪推。ホリスの肺から海水が検出されたのだ。ギテスはそれを否定し、夜中に排水が海に流されていた現場に二人を連れて行くが、ルーは納得せず、2時間以内にイブリンを署に連れてこなければ証拠隠蔽でギテスを逮捕すると脅す。
ギテスはモウレー家に向かうが、イブリンはいなかった。ギテスが庭に出ると、庭師が海水は芝に悪いとギテスに話しかける。ギテスは改めて池に沈んでいた光るものを拾い上げる。それは割れためがねだった。ギテスはめがねを携えて、イブリンが女を軟禁していた家に向かう。ギテスはイブリンの目の前でルーに電話をし、イブリンの居場所を伝えると、イブリンにめがねを見せて推理を披露する。イブリンは、夫の浮気への嫉妬心からホリスを問い詰め、ホリスは庭で事故死。それを愛人に見られたため、金の力で口を封じていたのだろうと。イブリンは否定し、本当のことを言うとギテスに告げる。ギテスが女の名を尋ねると、イブリンは、女の名はキャサリンで、自分の娘だと答える。ギテスはイブリンを平手打ちし、真実を話せ、と詰め寄る。イブリンは今度は自分の妹だと答える。ギテスはまたも平手打ち。イブリンは錯乱したように「私の娘、私の妹・・・」と繰り返す。ギテスはイブリンを突き飛ばす。しかし、イブリンの言葉は真実だった。キャサリンは、イブリンと、彼女の父親ノアとの間に生まれた子だったのだ。ギテスがレイプだったのかと尋ねると、イブリンはわずかに首を横に振る。それはレイプよりも残酷な状況を物語っていた。15歳だったイブリンは父の元から逃げ、メキシコに向かう。彼女の世話をしたのがホリスで、彼がキャサリンを育てていたのだ。ギテスはイブリンに、キャサリンを連れてカーンの家に行くよう指示。イブリンは、割れためがねは遠近両用だからホリスのものではない、とギテスに教える。逮捕されることを覚悟したギテスは、事務所のウォルシュに電話を入れ、何かあったらカーンの家に向かえ、と住所を告げる。カーンの家があるのはチャイナタウンだった。
ほどなく現れたルーとローチは、ギテスを車に乗せてカーンの家に向かうよう指示するが、ギテスは二人を騙してカーリーの家に向かうと、一人でカーリーの家に入って裏口からカーリーとともに車で脱出し、モウレー邸に向かう。カーリーはギテスに依頼され、イブリンの荷物を車で運び出す。モウレー邸に残ったギテスは、愛人が見つかったとノアに電話を入れる。しばらくしてノアがモウレー邸に現れ、ギテスに女の居場所を尋ねる。ギテスは母親のもとにいると答え、ノアの回答を待たずに見せたいものがあると言って死亡記事の切り抜きをノアに手渡すと、ホリスを殺しましたね、と言って割れためがねを見せる。それはノアのめがねだった。ノアは、未来のために金を増やそうと谷に水を引こうとしていた、と動機を語ると、護衛のクロードに証拠のめがねを受け取らせ、ギテスを車に乗せてキャサリンの居場所に向かう。そこにはギテスの同僚二人だけでなく、ルーとローチも現れる。ルーはギテスを逮捕。ノアに殺されると予感していたギテスは逮捕を喜び、ルーに真相を説明しようとするが、ルーは聞く耳を持たない。そこにキャサリンを連れたイブリンが現れる。ノアはキャサリンに近寄るが、イブリンはノアを追い払おうと拳銃をノアに突きつけ、ノアに発砲。ノアは腕を負傷する。ルーの威嚇射撃を伴う制止の声も聞かず、イブリンはキャサリンを乗せて車を走らせるが、ローチが車に発砲。突如、クラクションが鳴り響き、車は停止。次いで女性の悲鳴。駆けつけたギテスが運転席のドアを開けると、血まみれになったイブリンが仰向けに転がり出る。彼女は後頭部から左目を撃ち抜かれていた。半狂乱になって泣き叫ぶキャサリンを、ノアが後ろから抱きかかえて連れ去る。ルーはギテスを追い返す。納得のいかないギテスだったが、ウォルシュは「チャイナタウンだ」とギテスを諭し、彼を連れて現場から立ち去る。そう、かつての警官時代と同様、チャイナタウンで起きたことに対して、彼らは傍観することしかできないのだった。
脚本に定評のある本作。チャイナタウンのあらすじを読みたい人のためにも、詳しく書いてみた。ただ、個人的にはあまり面白い作品だと思うことができなかった。
キャサリンの正体が明かされる瞬間が最も興奮する瞬間のはずなのだが、シナリオが練られすぎていて、逆に感動できなかったのかもしれない。あらすじを追うために二度観たので、ようやく少し面白さを感じ始めた。
イブリンがギテスのオフィスで父親のノアのことを話すとき、「my...my father(私の・・・私の父)」と少し言いよどむシーンがある。これは、ノアが父でもありながら、自分の子をはらませた男でもあることを一瞬考えたからであるようで、二度観ないと気づかない細かい演技だった。
【5段階評価】3
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