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2016年7月

2016年7月23日 (土)

(1384) SUPER8

【監督】J・J・エイブラムス
【出演】ジョエル・コートニー、エル・ファニング、カイル・チャンドラー
【制作】2011年、アメリカ

スティーブン・スピルバーグが製作に名を連ねたSF映画。

映画製作が趣味の少年、ジョー・ラム(ジョエル・コートニー)は、友達と深夜の駅での撮影中、貨物列車に自動車が衝突する場面を目撃。列車は大事故を引き起こす。
自動車を運転していたのは理科の先生、ウッドワード(グリン・ターマン)だった。ジョーたちは、ウッドワードに「今見たことを内緒にしないと、両親もろとも殺される」と脅される。
事故現場には軍が到着し、現場検証を始める。ジョーの父、ジャック(カイル・チャンドラー)は、軍の行動を怪しむが、軍のネレク大佐(ノア・エメリッヒ)にだまされ、捕らえられてしまう。
ジョーの映画仲間だったアリス(エル・ファニング)は、次第にジョーと仲良くなる。しかし、ジョーの母親は、アリスの父、ルイス(ロン・エルダード)の酒癖の悪さが遠因で職場の事故により死亡しており、ジャックはジョーにアリスには会うなと告げ、ルイスもまた、ジョーにアリスに近づくなと言っていた。アリスはそれでもジョーに会うが、それを父親にとがめられ、家を飛び出す。ルイスはアリスを追いかけるが、アリスは突如、謎の巨大な生物にとらわれてしまう。
ジョーはルイスからアリスがさらわれたという話を聞き出し、仲間とともに彼女の救出に向かう。ジャックも軍の施設から抜け出し、ルイスとともに子供たちを探しに行く。
巨大生物の正体は宇宙人だった。ジョーは宇宙人が地下に作った基地に潜入。仲間のケアリー(ライアン・リー)が爆竹で宇宙人をおびき寄せ、ジョーは宇宙人に殺される寸前のアリスを救い出す。ケアリーと合流した3人は必死で逃げるが、ついに宇宙人に追いつかれ、ジョーは宇宙人に捕まってしまう。しかし、ジョーが優しく宇宙人に話しかけると、宇宙人はジョーを地面に残して走り去る。宇宙人は高度な技術で周囲の金属を引き寄せ、給水塔の上に巨大な宇宙船を登場させる。ジョーとアリスが、それぞれの父親と再会して抱擁を果たす中、宇宙船は空の彼方へと飛び立っていくのだった。

子供が主人公ということで、「E.T.」や「グーニーズ」のような冒険ものを想像していたが、終始シリアスなSFサスペンスだった。
軍が追う秘密とは何か。人々を襲う生物の正体は何か。謎解きがメインの展開でありながら、自動車で貨物列車に正面衝突を挑んだドライバーが普通に生きていたり、物理学的にあり得ないような大事故を起こしながら、間近にいた子供たちが全員無傷だったり、といった超常現象のようなできごとに対する説明が全くない。
モノや犬が大量に消滅することについても、何か部品や食料にしたのかな、という想像任せで、やはり十分な説明がない。とらわれた人たちも、ただの宇宙人の食料でしたという落ち。このあたりの説明不足は物足りなかった。

【5段階評価】3

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2016年7月21日 (木)

(1383) ピース オブ ケイク

【監督】田口トモロヲ
【出演】多部未華子、綾野剛、松坂桃李、木村文乃
【制作】2015年、日本

ジョージ朝倉原作漫画の映画化作品。レンタルビデオ店で働く男女のラブストーリー。

高圧的な彼氏(柄本佑)と付き合っていた梅宮志乃(多部未華子)は、友人のおかま、天ちゃん(松坂桃李)の勧めでレンタルビデオ店のアルバイトとなる。店長の京志郎(綾野剛)は、志乃の住むアパートの隣の部屋に住んでいる男だった。
志乃は京志郎が気になりはじめる。彼にはあかり(光宗薫)という同棲相手がいたが、やがて姿を消し、志乃と京志郎は付き合い始める。
しかし、京志郎はあかりと接触を続けていた。それに気づいた志乃は激怒するが、京志郎の志乃への愛が真実であることを知り、二人は熱いキスを交わすのだった。

綾野剛と多部未華子の濃厚なキスシーンが見せ場。序盤から胸元をあらわにしてブラジャー越しに柄本佑に乳房をさわられたりもしており、どちらかというとおさな顔の多部未華子の、セクシーな一面が観られる。
主人公の女性も、恋人となる男性も、かわいすぎず、かっこよすぎず、いい人過ぎず、等身大の恋愛が描かれていた。

【5段階評価】3

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2016年7月15日 (金)

(1382) ゼロ・グラビティ

【監督】アルフォンソ・キュアロン
【出演】サンドラ・ブロック、ジョージ・クルーニー
【制作】2013年、アメリカ、イギリス

宇宙空間で事故に遭遇した女性飛行士のサバイバルを描いた作品。

宇宙飛行士のライアン・ストーン(サンドラ・ブロック)は、指揮官のマット・コワルスキー(ジョージ・クルーニー)との船外作業中、崩壊した人工衛星の破片が衝突するという事故に遭遇。乗っていたスペースシャトルも大破し、仲間たちは全員死亡し、地上との通信も途絶える。
コマのように回転しながら宇宙空間に投げ出されたライアンは過呼吸状態になるが、マットとの通信で落ち着きを取り戻す。二人は国際宇宙ステーションを目指すが、途中で移動用ジェットエンジンの燃料が切れてしまう。二人は移動速度が落ちないままステーションに激突し、はじかれてしまう。ライアンの脚にパラシュートのひもが絡まり、なんとか静止するが、止まれないマットのワイヤーをつかんだため、慣性で二人ともステーションから遠ざかりそうになってしまう。
マットはライアンを助けるため、自らワイヤーを外し、宇宙空間に消えていく。ステーションに入り込んだライアンはマットを助けようと通信を試みるが反応はない。すると、ステーションで火災が生じ、ライアンは慌てて接続されていた宇宙船に乗り込み、船外に逃れる。ライアンは、マットの指示通り、中国の宇宙船に向かおうとするが、燃料切れでエンジンが動かない。地上基地との交信もかなわず、ライアンは生還をあきらめて宇宙船の酸素供給を停止させてしまう。
すると突然、宇宙船の窓の外に、宇宙空間に投げ出されていたはずのマットが現れ、ハッチを開けて強引に中に入ってくる。驚いたライアンが状況を説明するが、マットは着陸時の逆噴射の機能を利用すればいいと告げる。ライアンは半ば茫然としながら、その作戦の有効性を確信。ふとマットの方を見る。そこに、マットの姿はなかった。全ては幻想だったのだ。
しかし、ライアンはその幻影に勇気づけられ、再び酸素供給装置を起動させると、宇宙船に着陸寸前の状態にあるとデータを入力。それにより宇宙船の逆噴射装置が起動。中国の宇宙船に接近したライアンは、地球に落下しつつある中国船に乗り込み、大気圏に突入する。突入は成功し、ライアンは水面に落下する。水没しそうになる有人ポッドから脱出したライアンは、陸地に到達。大地を踏みしめるのだった。

通信の声と、乗組員の死体を除けば、登場人物は二人だけ。しかしマット役のジョージ・クルーニーは序盤と終盤にしか登場しておらず、ほとんどサンドラ・ブロックの一人芝居である。主人公の娘の存在などは、宇宙空間での会話の中で描かれるのみだが、それにより、退屈な説明シーンを用いることなく、主人公の人物像を観る者に伝えている。
地上のシーンを描かないことで、観客は重力があって空気もあるという地上のシーンで安心することができず、宇宙空間にただよい続け、地上のことは想像するしかないという絶望的な状況に没入できるのだ。
登場人物もきわめて少ないが、会話の中や通信の相手として、いろいろな人物が出てくるため、登場人物が少ないとは感じられない。カメラワークが評価される作品だが、演出も巧みだ。

【5段階評価】4

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2016年7月 9日 (土)

(1381) 突破口!

【監督】ドン・シーゲル
【出演】ウォルター・マッソー、ジョー・ドン・ベイカー、ジョン・バーノン
【制作】1973年、アメリカ

銀行からマフィアの裏金を盗んでしまった強盗の運命を描いた作品。「ダーティハリー」の監督、ドン・シーゲルの描くクライム・サスペンス。

銀行強盗を企てたチャーリー・バリック(ウォルター・マッソー)は、仲間の一人と愛する妻を失いつつ、仲間のハーマン(アンディ・ロビンソン)とともに逃走。盗んだ現金は75万ドルに及ぶが、ニュースでは2,000ドルほどしか盗まれなかったと報道。チャーリーは、銀行からマフィアの裏金を盗んでしまったと直感する。
豪遊しようとするハーマンを説き伏せ、二人はチャーリーの飛行機で州外へ高飛びすることを計画。しかし、偽のパスポートを手配する過程でマフィアに情報が漏れ、事件屋のモリー(ジョー・ドン・ベイカー)が差し向けられる。
モリーはチャーリーとハーマンの潜むトレーラーハウスを探り当てるが、チャーリーはそれを予期して家の外に身を潜めていた。モリーはトレーラーハウスでハーマンから情報を聞き出そうとするが、ハーマンが何も知らないことを確認するとハーマンを惨殺。
モリーは、銀行の責任者、ボイル(ジョン・バーノン)に金を返すと連絡を入れ、廃車場に一人で来れば金を返すと取引を持ちかける。モリーは遠くから車に隠れて様子をうかがう。
自分のセスナ機で待ち合わせ場所に現れたチャーリーは、初対面のはずのボイルに親しげにハグをし、大げさに喜ぶ。それを遠目に見ていたモリーは、チャーリーとボイルが共謀してマフィアの金を盗んだと勘違い。車を発進させてボイルをひき殺す。チャーリーはセスナで逃走しようとするが、モリーの車に飛行機をひっくり返されてしまう。
操縦席に反対にぶら下がり、身動きのとれないチャーリーは、観念したように、ポケットにあった鍵をモリーに渡し、廃車場に置いた青い車のトランクに金があると白状する。モリーがトランクを開けると、そこには殺されたハリーの死体があった。モリーがだまされたと気づいた瞬間、車は大爆発を起こし、モリーは爆発に巻き込まれて死亡する。
チャーリーは操縦席から盗んだ金を持って抜け出すと、用意した別の車で廃車場を後にする。爆発した車では、彼の脱ぎ捨てたつなぎの服が炎に包まれているのだった。

限られた登場人物がそれぞれ個性的な役割を担って無駄がなく、中身の濃い作品だった。モリーを倒した後、炎上する車に紙幣を投げ込むのは、何を狙ってのことなのか、よく分からなかった。75万ドルが燃え尽きてしまったように見せかけようとしたのだろうか。

【5段階評価】3

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(1380) ベルセルク 黄金時代篇 I 覇王の卵

【監督】窪岡俊之
【出演】岩永洋昭(声)、櫻井孝宏(声)、行成とあ(声)
【制作】2012年、日本

三浦建太郎原作漫画のアニメ化作品。

剣技に秀でる荒くれの傭兵、ガッツ(岩永洋昭)は、鷹の団の長、グリフィス(櫻井孝宏)に見初められる。グリフィスはガッツとの一騎打ちに勝利し、彼を鷹の団に引き入れる。
グリフィスはガッツの活躍もあり連戦連勝で名をあげる。一方でグリフィスは、自らの出世の障害となるユリウス(小山力也)の暗殺をガッツに命じ、ガッツは苦労しながらも成功させる。ガッツの決死の暗殺作戦の中、グリフィスはミッドランド王国の王女、シャルロット(豊崎愛生)に急接近するのだった。

漫画と異なり、時系列的にガッツとグリフィスの出会いを描いている。ノスフェラトウ・ゾッド(三宅健太)が唯一の魔物として登場。単なる戦記物ではない作品を予感させるが、後々のダークファンタジー的展開に比べると、人間的な世界を描いた内容であり、少々物足りなさを感じた。
WOWOWで本作のみ無料放送されたが、続編にはいつお目にかかれることやら。

【5段階評価】3

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2016年7月 8日 (金)

(1379) 100回泣くこと

【監督】廣木隆一
【出演】大倉忠義、桐谷美玲、ともさかりえ、
【制作】2013年、日本

中村航原作小説の映画化作品。記憶を失った青年とがんを煩った女性とのラブストーリー。

傘を持って友人の結婚式に向かう沢村佳美(桐谷美玲)は、同じく傘を持った青年、藤井秀一(大倉忠義)に話しかけられる。佳美は藤井を知っており、話しかけられて驚くが、そのことは藤井には伝えない。藤井はバイク事故で記憶を失っており、佳美のことを知らないのだった。
二人はつきあうようになり、藤井は佳美にプロポーズ。佳美は1年の準備期間をおこうと提案する。佳美は子宮がんを患っており、その再発の危険性が確認できるのを待とうとしていたのだ。
幸せな同棲生活を続ける二人だったが、佳美は病状が悪化。父親を看病すると嘘をつき、佳美は入院する。がんは再発していた。摘出手術を行うが、すべては取り切れず、抗がん剤治療が始まる。
そうとは知らない藤井だったが、実家にあった同窓会の案内状を頼りに街を歩いていると、かつて佳美と同棲生活を送っていた貸家の大家と再会。過去に佳美とつながりがあったことを知った藤井は、佳美の親友、夏子(ともさかりえ)に会う。彼女は佳美ががんであることを白状する。
藤井はショックを受けるが、かつて自分が佳美の病気を知り、彼女に結婚指輪を渡そうとして、それを果たせずにバイク事故に遭っていたことを思い出す。
藤井は佳美と再会し、佳美の願いを聞いて愛犬のブックとともにバイクで遠出する。
佳美は藤井とハワイで挙式をして、ルナレインボーを見たいと藤井に告げる。藤井は頷くが、看病もむなしく、佳美は帰らぬ人となる。
藤井は単身、ハワイに渡り、毎晩、砂浜に通い、ついにルナレインボーを目にする。
帰国した藤井は新たな気持ちで、修理したバイクに乗るのだった。

個人的には、同じ廣木隆一監督の「余命1ヶ月の花嫁」の方がはるかに泣けた。結婚式の誓いの言葉で泣かせようとするところは、「ツレがうつになりまして。」ともかぶったが、ツレうつの方が泣けた。演技力の差もあるだろうが、本作は主役の描き方がキレイすぎてちょっとリアリティを欠いていた。

【5段階評価】3

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2016年7月 7日 (木)

(1378) ブラック・ライダー

【監督】シドニー・ポワチエ
【出演】シドニー・ポワチエ、ハリー・ベラフォンテ、キャメロン・ミッチェル
【制作】1972年、アメリカ

南北戦争後のアメリカを舞台に、迫害される黒人と残忍な白人グループとの戦いを描いた作品。

西部を目指す黒人たちを惨殺し、迫害する白人集団のリーダー、ディシェイ(キャメロン・ミッチェル)は、黒人の移民を手引きするバック(シドニー・ポワチエ)を倒そうとやっきになる。
白人たちの蹴撃から逃れたバックは、川で体を洗っていた宣教師のルサフォード(ハリー・ベラフォンテ)の馬と自分の馬を交換して奪って逃走。ルサフォードはバックの馬を連れていたことからディシェイに目をつけられる。
バックを発見したルサフォードはバックを殴るが、彼のカリスマ性に気づき、行動を共にする。
バックを追うディシェイの集団に対し、バックとルサフォードは逆に奇襲をかけ、ディシェイを倒す。残党に追われ、窮地に陥る二人だったが、先住民の協力を得て戦いに勝利する。

黒人とインディアンが正義の側、白人が悪者の側で描かれている。ステレオタイプではあるがわかりやすい。比較的飽きさせない展開ではあったが、映像的な迫力は控えめだった。

【5段階評価】2

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2016年7月 6日 (水)

(1377) ゲゲゲの女房

【監督】鈴木卓爾
【出演】吹石一恵、宮藤官九郎、坂井真紀
【制作】2010年、日本

漫画家、水木しげるの妻、武良布枝の自伝的小説の劇場版。松下奈緒と向井理が演じたNHK連続テレビ小説とは別の作品。

島根の酒屋の娘、布枝(吹石一恵)は29歳になり、見合いで貸本漫画家の武良茂(宮藤官九郎)と結婚。結婚前に安定した生活と聞いていたのとはまるで違う貧乏暮らしで、風変わりな茂にとまどいながらも、布枝は茂の仕事と暮らしを支えていく。
講談社から連載の依頼が来ても、宇宙ものは描きたくないと断る茂に、布枝は業を煮やすが、子供の妖怪に出会い、急に産気づく。
子供が産まれ、今度は講談社から何を書いてもいいという執筆の依頼が来て、ようやく幸せの兆しが訪れるのだった。

古き良き昭和を描いているようで、巨大なマンションが背景に登場したりもして、時代の描き方は中途半端だった。布枝も能弁ではなく、茂もひょうひょうとしていてあまり感情をむき出しにしないので、お芝居くさすぎないのはよかった。ただ、茂の漫画が世に認められる経緯があまり描かれておらず、若干唐突だったり、二階の間借り人(村上淳)や餓死した漫画家(宮崎将)との関わりが茂をどう変えたか、はっきりと描かれておらず、ややのっぺりとした作品だった。

【5段階評価】3

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2016年7月 5日 (火)

(1376) 居酒屋兆治

【監督】降旗康男
【出演】高倉健、大原麗子、加藤登紀子、田中邦衛、伊丹十三
【制作】1983年、日本

山口瞳原作小説の映画化作品。赤提灯の店主の男を巡る人間模様を描いた作品。

サラリーマンを辞して赤提灯の焼き鳥屋を営む藤野英治(高倉健)は、2人の娘と妻の茂子(加藤登紀子)と仲むつまじく暮らしている。英治の営む居酒屋兆治は、常連客でにぎわうが、高校時代の先輩、河原(伊丹十三)は時折店に来ては英治に難癖をつけていた。まわりの客は河原を不愉快に思うが、英治は何も言い返さずじっと耐えていた。
大牧場を営む神谷久太郎(左とん平)に嫁いださよ(大原麗子)は、かつて恋人だった英治を今も忘れることができず、牧場の大火事のあと、姿をくらましてしまう。
さよは一度、英治の店に来るが、いつのまにか店を後にしてしまう。その後もさよは、何度か英治に電話をかけるものの、何も言葉を発することはできずにいた。
兆治の常連客の秋本の妻(立石凉子)が急死し、英治は茂子と弔問に向かう。障子の破れたあばらやで、秋本は、ずっと狭い布団で妻に足を絡めて寝ていたから、最近は寝付けず金属バットに足を絡めて寝ようとしているのだ、という話をする。
そんなことも知らず、河原は、病気の妻に扇風機を当てっぱなしにするとは馬鹿だと英治の店でくだを巻く。堪忍袋の緒が切れた英治は、ついに河原の腹をなぐり、逮捕されてしまう。ささよの失踪を事件として追っている警察は、英治をしつこく尋問するが、やがて英治は釈放される。英治は向かいの小料理屋のおかみ、峰子(ちあきなおみ)から、さよをすすき野で見た知り合いがいるという情報を聞き、すすき野に向かう。そこには兆治の客で、すすき野で堕落したさよに求婚している越智(平田満)がいた。英治は越智の話を聞き、さよのすむ部屋に向かうが、寂しさを紛らすための酒におぼれすぎたさよは、すでに帰らぬ人となっていた。

不器用な男を哀感たっぷりに演じる高倉健の代表的な作品。豪華なキャストで、山藤章二や武田鉄矢などもちょい役で登場している。
英治とさよの関係を知りつつも、問いたださない妻の茂子の悲しげなほほえみも印象的だった。幸せを長続きさせるためには、何もかも自分の思い通りにしようとしないことだ、と教えてくれている気がした。

【5段階評価】3

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2016年7月 4日 (月)

(1375) ハルフウェイ

【監督】北川悦吏子
【出演】北乃きい、岡田将生、溝端淳平、仲里依紗
【制作】2008年、日本

テレビドラマ、ロングバケーションやビューティフルライフの脚本家、北川悦吏子がメガホンをとった青春恋愛作品。

長身でかっこいい高校生、シュウ(岡田将生)に片思いのヒロは、保健室で親友のメメ(仲里依紗)に、シュウに告白するかどうか、悩みを相談していた。
ヒロはいつの間にか眠りに落ち、その間に、シュウがバスケの試合中に鼻血を出し、保健室にやってくる。眠りから覚めたヒロは、シュウがいることも知らずに、今、夢の中でシュウに告白しちゃった、正夢かなぁ、と無邪気にメメに話しかける。シュウは慌てて保健室を飛び出す。
下校時刻になり、ヒロは帰り道でシュウを待つ。なんとかシュウに話しかけようとするが、「つきあわない? 」と告白したのはシュウのほうだった。
幸せいっぱいのヒロだったが、自分が地元の大学に進学予定であるのに対し、シュウは早稲田狙いを隠していた。ヒロは、東京の大学を受けるのに何でコクったの、とシュウを責める。
シュウは高梨先生(成宮寛貴)に相談。先生は目先のことだけ考えるな、とアドバイスするが、シュウは早稲田行きをあきらめる。
ヒロはそのことを喜びながらも、自分が夢をあきらめさせたのではないか、と悩み始め、書道の平林先生(大沢たかお)に相談する。先生は、長い人生をともに過ごすとしたとき、ここ数年の時間をともに過ごさず、相手の男性が一回り大きくなって帰ってくるのと、おまえ以外の女性は知らないという狭い見識で一緒にいるのと、どちらが本当に幸せなのだろうか、とヒロに問いかける。
ヒロは考え直し、シュウの早稲田受験を応援することに決める。ヒロはシュウの受験に際し、母親となれないお弁当作りに勤しみ、駅でシュウを見送る。
ヒロは、学校に帰ってきたシュウと音楽室で遊んでいる。ヒロは「東京に行ってほしくないです」と本音を漏らし、目に涙を浮かべるのだった。

映画の中盤、ヒロがシュウに「途中」を意味する英単語のクイズを出し、答えられないシュウにヒロが「ハルフウェイ」と答えを言うのだが、シュウは「ハルフウェイ? ハーフウェイでしょ」と大笑い。優しいシュウは、ハルフウェイということにしよう、と応じる。こんなやりとりが映画のタイトルになっている。
冷静に観れば、ヒロは、あこがれの雲の上の存在だったシュウに対して、告白されて彼女になった瞬間、気に入らないことがあると怒り出してシュウの人生を振り回し、尊大な態度でわがまま放題。
なんつう勝手な女だと思われかねないヒロに対して、まったくぶち切れることなく「俺、やっぱりヒロのこと好きなんだな」とシュウに言わせてしまう脚本に、感情移入できるか、なにこの少女漫画と持ってしまうかは、評価の分かれるところだろう。
とはいえ、うまく行くか、はかない思い出になるか分からない危うげな関係の二人の行く末をあえて見せない終わり方をすることで、青春時代の切ない恋愛をうまく観る側に伝えているな、とは思った。

【5段階評価】3

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2016年7月 3日 (日)

(1374) サン・ロレンツォの夜

【監督】パオロ・タビアーニ、ビットリオ・タビアーニ
【出演】オメロ・アントヌッティ、ミコル・グイデッリ、マルガリータ・ロサーノ
【制作】1982年、イタリア

ドイツ軍の襲撃から逃がれようとする村人たちの逃避行を描いた作品。

ドイツ軍の襲撃の噂を聞きつけ、ガルバーノ(オメロ・アントヌッティ)は仲間を連れ、アメリカ軍を探すために隠れ家としていた教会を抜け出す。
教会は爆撃され、隠れていた人々の多くが犠牲となる。
ガルバーノの仲間たちも、最終的にはアメリカ軍に頼ろうとする側とムッソリーニを信奉する側に分かれ、死闘を繰り広げる。
ガルバーノは目的地としていた街にたどり着き、かつて見初めていたコンチェッタ(マルガリータ・ロサーノ)と一夜をともにする。ガルバーノは街に残り、コンチェッタたちは旅立つのだった。

ガルバーノに同行していた少女、チェチリア(ミコル・グイデッリ)の目線で悲劇が描かれているのだが、不条理映像も織り交ぜられ、非常に難解な描写。個人的には退屈千万の作品だったが、映像や演出はさすがにしっかりとしていた。

【5段階評価】2

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2016年7月 1日 (金)

(1373) オデッサ・ファイル

【監督】ロナルド・ニーム
【出演】ジョン・ボイト、マクシミリアン・シェル、メアリー・タム
【制作】1974年、イギリス、西ドイツ

ドイツ軍戦犯をかくまう秘密組織の謎に挑むジャーナリストの活躍を描いた作品。

ドイツ人記者、ピーター・ミラー(ジョン・ボイト)は、友人の警察関係者から、ガス自殺を図った老人の手記を見せられる。その老人はユダヤ人で、ロシュマンという収容所長の指図で妻を殺されており、彼の残虐ぶりを記録していた。彼は船を調達するためにドイツ軍将校を撃ち殺すような暴挙にも及ぶ極悪人だった。
ピーターは愛するシギー(メアリー・タム)を残し、ロシュマンという男の捜索に執念を燃やす。やがて彼は、配線間際にナチス・ドイツ親衛隊の軍人の経歴を偽って生き残らせるための組織、オデッサの存在を知る。
ピーターはオデッサに近づくため、自らの身分を偽って、元親衛隊の軍人になりすます。しかし、シギーに電話をしたことから身分を偽っていることがばれてしまい、刺客を送り込まれる。
ピーターは偽の身分証を作成する印刷工場に向かい、身分証の作成を待つ間、ホテルに滞在する。そこに工場主から電話が入り、写真屋を手配したからすぐに来いと言われる。しかしそれは、送り込まれた刺客の指示だった。怪しんだピーターは工場に密かに侵入。死闘の末、刺客を倒す。工場主が金庫に保管していたファイルを入手し、ついにロシュマンの現在の身分を知る。彼は電機メーカーの重役だった。
ピーターはロシュマンの屋敷に忍び込み、彼と対峙する。ロシュマンは、自分は軍の命令に従っただけだ、自分たちの活躍のおかげで今のドイツ人は優秀な民族になった、今のドイツ人は我々に感謝すべきだ、と自説をぶちまける。
しかし、ピーターのロシュマンに対する怒りの根源は、ユダヤ人虐殺に対する義憤ではなかった。ロシュマンに殺されたドイツ人将校は、ピーターの父親だったのだ。ピーターはロシュマンの悪行を白日の下にさらそうとするが、ロシュマンが隠していた銃でピーターを撃とうとしたため、ピーターはロシュマンを返り討ちにする。オデッサ・ファイルにより、多くの戦犯が裁かれることになるのだった。

巨大秘密組織オデッサに単身で立ち向かうジャーナリストの執念がていねいに描かれている。特ダネを手に入れようという記者根性のなせる技なのか、と、感情移入できるようなできないような微妙な気持ちで観ていたら、実は彼の執念は父親殺しの真犯人を裁くことにあったということが、終盤の終盤で明かされ、サスペンス映画のどんでん返しのようなカタルシスが得られる。よくできた作品だった。

【5段階評価】3

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