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2013年2月23日 (土)

(956) 告発のとき

【監督】ポール・ハギス
【出演】トミー・リー・ジョーンズ、シャーリーズ・セロン、ベス・チャサム
【制作】2007年、アメリカ

イラク戦争から帰還した息子の死の真相を探る父親を描いた作品。

元軍人のハンク(トミー・リー・ジョーンズ)のもとに、息子のマイク(ジョナサン・タッカー)が無許可離隊し、行方不明になったとの連絡が入る。無許可離隊は軍人として恥ずべき行為。彼はすぐさま基地に向かい、息子の同僚であるペニング(ベス・チャサム)らに話を聞くが、息子の居場所を知るものはいない。彼は、息子の部屋から携帯端末をこっそり持ち出し、裏業者に読み出しを依頼する。端末には、激しく乱れているものの、マイクが撮影したらしい動画が納められているようだった。ハンクは業者の男にデータの読み出しを依頼し、警察に向かう。
刑事のエミリー(シャーリーズ・セロン)はシングル・マザー。今日も、退役軍人の夫が犬を浴槽で溺死させたと訴えてくる女性を追い返し、それを同僚のオヤジ連中に冷たくからかわれている。まさに「スタンド・アップ」と同じような女性蔑視の職場環境。そこに、息子の行方不明を訴えるハンクが現れる。彼女は、それは軍事警察の仕事だとはねつけるが、彼女は後悔することになる。マイクは、42箇所もナイフで刺された上、死体をばらばらにされ、しかも焼かれ、さらには遺体の一部を野犬に食われるという、これ以上ないほどの無残な状態で発見されたのだ。
死体の発見現場は軍の管轄だったということで、捜査権は軍に移るが、エミリーはハンクに頼まれ、彼を現場に連れて行く。息子は警察の管轄する場所で殺されたと確信した彼は独自の捜査を続ける。ハンクは、退役した今でも、ズボンの折り目はしっかり直し、靴を磨き、ベッドメイクを自分で行う、規律正しい軍隊で育ったきまじめな男。自分の息子もまじめな軍人だと信じていたハンクだったが、捜査を続けるうち、息子が覚醒剤に手を出しており、いかがわしい店でストリッパーを卑猥な言葉で罵倒して店を追い出され、仲間とけんかしていたことなどを知る。
ハンクは、マイクと苦労をともにした戦友が、あのような残忍なことをするはずがないと考えるが、しだいに、マイクの同僚達が虚偽の証言を重ねていることが明らかになっていく。
そして、彼らがチキン屋にマイクと行ったというのが嘘だったことが明らかになる。ハンクとともにマイクの死を嘆いていたペニングが実行犯だった。彼らはストリップバーを追い出され、いつものようにけんかし、ペニングが思わずマイクを刺し殺した。肉屋に勤めていた経験のある同僚が死体を切断して焼き、埋めようと思ったがあまりにも腹が減っていたのでチキン屋に行った。マイクは戦地で、確保した捕虜の傷に、医者のふりをして手をつっこみ、痛いかと尋ねて面白がる行為を重ねていた。マイクのあだな、「ドク」はそこから来た。ハンクを目の前にして淡々と語るペニング。ハンクは殴りかかるわけでも激高するわけでもなく、憔悴しきった顔でそれを聞いている。彼の軍人としての価値観、息子への妄信的な信頼が一気に崩れ去る瞬間だった。
ハンクはようやく息子が残していた乱れたビデオの中身を悟る。マイクは戦地で移動中、軍規によって車両停止を禁じられているため、道に飛び出していた現地の子どもを、そのままはね殺していた。彼はその日、父親に「ここから救い出してくれ」と泣いて懇願するが、ハンクはただ「がんばれ」と突き放していたのだ。そのときから、おそらくマイクは心を蝕まれていったのだろう。
彼は、国旗を上下逆向きに掲げる。それは危機からの救難を意味しているのだった。

犯人捜しのサスペンスの色合いで展開。邦題のせいもあって(原題は「In the Valley of Elah」)、イラク戦争に関する軍の不正を知った息子が、組織的な陰謀に巻き込まれて口封じで殺されたのだと思わせる。しかし、実際には、ハンクの息子は、戦地で心を病み、捕虜虐待を繰り返し、ささいなことで同僚に殺され、痛烈な怨恨もないにもかかわらず、これ以上ないほどの無惨な死体をさらしていた。このどんでん返しが痛烈。
ハンクはエミリーの家に招かれ、エミリーの幼い息子デビッドに、巨人ゴリアテに無謀と思える戦いを挑むダビデの話をしていた。なぜ王はダビデをゴリアテに向かわせたの、とデビッドは尋ねるが、母親は分からないと答える。ハンクもおそらく、若者を戦争という強大な巨人のもとに送り込む国家の意思が理解できなくなったのだろう。
事実に着想を得た、と冒頭にあり、最後は無残に転がる子供の死体らしきスナップ。メッセージの強さが印象に残るが、衝撃の真実が犯人の自供のみで語られるところが、若干、分かりづらかった。確かに、映像化すると興ざめなのだとは思うが、自供からの想像任せではピンとこないところもある。分かりにくいビデオ映像を使う手もあったかもしれない。
死体の映像などは非常にリアル。犬を溺死させられた、と警察に訴えていた女性が、結局、夫に殺され、浴槽で冷たくなった女性の手を握ってエミリーが悔恨の涙を流すのも、退役軍人の心の闇をえぐって印象的だった。

【5段階評価】3

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