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2013年2月 5日 (火)

(941) 八甲田山

【監督】森谷司郎
【出演】高倉健、北大路欣也、三國連太郎、加山雄三
【制作】1977年、日本

明治時代の八甲田山における雪中行軍で起きた惨劇を描いた作品。

日露戦争に向けて、冬季訓練が必須と考えた軍部の友田少将(島田正吾)と中林大佐(大滝秀治)は、弘前歩兵第31連隊の徳島大尉(高倉健)と青森歩兵第5連隊の神田大尉(北大路欣也)に、八甲田山での雪中行軍の実行を示唆。第31連隊の児島大佐(丹波哲郎)が、八甲田山ですれ違うようにしては、と言ったことから、徳島と神田はそれを踏まえて計画を立案。二人は徳島の家で酒を酌み交わし、八甲田で会おうと誓い合う。
徳島は神田の隊とすれ違うため、十和田湖方面に迂回する10泊240kmに及ぶ計画を立てる。一方の神田は3日の行程であったため、山田少佐(三國連太郎)は神田に、隊を200名の中隊規模にすることを指示し、自らの随行を決める。
そして行軍決行の日。徳島が、志願兵を集めた少数精鋭の部隊で臨み、地元の案内人を立てて堅実に行軍を進めたのに対して、神田の隊は200名に及んだため、隊列は延び、物資を積んだそり隊は先頭から遅延がち。しかも、神田の手配によって地元の村人が用意した案内人を山田少佐が追い返してしまい、勝手に出発を命令するなど、指示系統が混乱。結局、予定の行軍を終えられないまま天候が悪化してしまう。神田はいったん帰営を選択するが、随行隊は何のための準備だったのかとそれを却下。しかし神田が隊を待機させていると、寒さにふるえる山田少佐が帰営を決定するなど、ことあるごとに神田の判断をくつがえす。しかたなく帰営の歩を進めると、特務曹長がたまたま見つけた木の枝の切断面を根拠に、目的地の方向が分かったと言ったことから、山田少佐はその言葉を鵜呑みにして、一転、目的地の田代を目指すと言い出す。しかし、特務曹長は道に迷ってしまい、隊は完全に遭難してしまう。
川に到達した隊は西へ向かえばよいと判断するが、眼前には高い崖。山田少佐が登るしかないと言い、隊は登り始めるが、落伍者が続出。ようやく登った者も目的地にたどり着くことはなく、厳しい寒さのため、精神に異常を来す者も出て、隊員達が凍死していく。神田は「天は我々を見放した」と嘆く。その後も死者の増加は治まらず、寄り集まって夜を越そうとするも、輪の外側の者から寒さで倒れていくのだった。
神田の隊が遭難していることを知らない徳島は、そのまま八甲田行きを決行。その途上、神田の隊の遭難者を発見する。賽の河原では、多くの兵士が凍死しており、徳島はその中に、神田の姿を見つける。
八甲田を踏破した徳島は、連隊本部に雪の中で死んでいた神田を見たと告げるが、本部の少佐(神山繁)は神田は捜索隊がすでに収容していると言い、徳島を遺体安置所に連れて行く。そこには棺に納められた神田の遺体と、横にたたずむ妻(栗原小巻)がいた。妻から神田が徳島に会うのを楽しみにしていたと聞かされ、徳島は号泣する。徳島が八甲田で見たのは幻影だったのだ。
山田少佐は精神を蝕まれつつも生還したが、彼は事件の責任の重圧に耐えかね、自殺する。
生き残った徳島らも、日露戦争で悲惨な最期を遂げるのだった。

かったるい作品を想像していたが、非常に見応えがあり、心に残る作品だった。この映画を見れば、吹雪のシーンがトラウマになること間違いなし。
3時間を超す長編ながら、序盤から説明シーンが端的でテンポがよく、話に引き込まれる。第5連隊を率いる神田が、綿密に計画を立て、慎重にそれを実行しようとしているのにもかかわらず、軍の思惑やメンツに絡め取られ、不幸の深淵へと引きずり込まれていくさまが胸を打つ。
本作で兵士が倒れていくシーンは、ドンパチ撃ち合ったりチャンバラ劇でバタバタ人が倒れるよりも真に迫り、逆に重々しい。銃撃戦や斬り合いのシーンでは、血しぶきを上げたり腕や首が飛んだり、といった特撮でリアリティを追求するが、寒さで死ぬのは倒れるだけだから、特殊な撮影は必要ない。そう思いがちだがそうではない。本作の凍死シーンに迫力があるのは、雪や吹雪のすさまじさがみごとに映像化されているからだ。
本作のロケはそうとうきつかったらしく、主演の高倉健すら凍傷になったらしい。本作のカメラマン、木村大作は、のちに監督として、同様に冬山を描いた「剣岳 点の記」を作っている。この作品でも、主人公の純粋な思いと、軍のメンツが衝突する構図になっている。

【5段階評価】5

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