(817) 阪急電車 片道15分の奇跡
【監督】三宅喜重
【出演】中谷美紀、戸田恵梨香、宮本信子、南果歩、谷村美月、有村架純
【制作】2011年、日本
有川浩原作小説の映画化作品。片道15分の阪急電車今津線で偶然乗り合わせた人々の交流を描く。
登場するのは、後輩社員(安めぐみ)に恋人(鈴木亮平)を寝取られたOL(中谷美紀)。今時の人々の非常識に憤慨する老婦人(宮本信子)。志望大学への受験に悩む女子高生(有村架純)。彼氏(小柳友)のDVに悩む女子大生(戸田恵梨香)。5,000円もするような豪華な昼食に無理矢理付き合わされることに悩む主婦(南果歩)。パンクファッションで軍事オタクのため、同級生からバカにされている大学生(勝地涼)。権田原という名字や野草にこだわる変わった趣味から友達になじめない女子大生(谷村美月)。友達からいじめを受けている小学生(高須瑠香)。
彼らが、電車での出会いから少しずつ、それぞれの悩みを解きほぐしていく。
しかし、何ともタイトル倒れというか、奇跡というからには、最初は無関係だった人々が、不思議な縁でつながり、最後に何かすばらしい奇跡を起こすとか、とんでもない災難を逃れるとか、そういう想像も付かなかったような物語の収束を期待するわけだが、本作は、そういう高いハードルのサブタイトルをつけておきながら、実際には、登場人物の関わりはせいぜい2~3人ずつで、奇跡と呼ぶにはあまりにもおこがましい、偶然の、いや、ある意味当然の産物のような話の寄せ集め。まあ原作もオムニバスみたいな短編集なので、原作に忠実と言えば忠実なのかもしれないが。
まあ何にせよ、「相棒 -劇場版- 絶体絶命! 42.195km 東京ビッグシティマラソン」だの、「交渉人 THE MOVIE タイムリミット高度10,000mの頭脳戦」だの、「踊る大捜査線 THE MOVIE 2 レインボーブリッジを封鎖せよ!」だの、最近の邦画の作品名にくっつく、大仰で長ったらしいサブタイトルは、何とかならんもんかねぇ。
制作者が、映画を後世に語り継ぐ名作にする気などさらさらなく、とにかく今売れればいい、と考えているのがありありで、本来、芸術作品でもあるはずの映画をあまりにも軽視していることに嫌悪感が走るし、しかも本作に関しては、「で、奇跡まだ~?」みたいな裏切りも感じた。
もう1点、気になったのは、宮本信子演じるおばあさん。説教っぷりの度がすぎていて、犬の手綱を引きたいという無邪気な孫(芦田愛菜)の願いすら、安全を優先するあまり、あなたには無理とはねつける。これは分別があるというよりは、融通が利かないという表現のほうがふさわしく、ちょっと共感しがたい性格だった。そのせいで、電車で騒ぐ関西のオバハン連中の我慢ならない様子に、この老婦人が啖呵を切るシーンも、本来なら快哉を叫ぶところであるはずが、「まあ、このおばあちゃんもちょっとな・・・」みたいな感情が邪魔してしまって、今ひとつカタルシスを感じることができなかった。
一方、関西人のタレントを多く起用しており、関西弁にあまり違和感がないのはよかった。戸田恵梨香、芦田愛菜、谷村美月、相武紗季、玉山鉄二など、へぇ、この人関西の人なんだ、みたいな発見は面白かった。主題歌もaiko。
谷村美月と勝地涼のカップルが、相手の何気ない一言にズキューンとなって戦闘機が飛んだり花が咲いたりしたシーンはかなりウケた。
【5段階評価】3
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