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2012年3月16日 (金)

(703) プライベート・ライアン

【監督】スティーブン・スピルバーグ
【出演】トム・ハンクス、マット・デイモン、トム・サイズモア、バリー・ペッパー
【制作】1998年、アメリカ

ノルマンディー上陸作戦の直後、一人の兵士を戦地から救出する作戦に挑む米兵達を描いた作品。戦闘の生々しく苛烈な迫力、戦争の恐怖の中に、強い反戦メッセージが込められている傑作。

オープニングでは、アメリカの墓地を訪ねる老人とその家族が登場。老人が回想する形で、ノルマンディー上陸作戦の舞台、オマハ・ビーチに場面が転換する。
乗り心地のことなど全く考慮されていない無骨な輸送船に、大量の歩兵が乗り込んでいる。震えの止まらない手で水筒の水を飲み、作戦に思いをはせるジョン・ミラー大尉(トム・ハンクス)の横には、船酔いに耐えきれず嘔吐する者が続出する中、平然とした表情で口の中のガムに手をやるホーバース軍曹(トム・サイズモア)がいる。
オマハ・ビーチに近づき、輸送船のハッチが開くと、その瞬間、敵の機銃掃射を浴び、全くなすすべなく兵士が倒れていく。パツッ、パツッ、という着弾音が生々しく、血しぶきではなく肉片が飛び散り、カメラのレンズに付着する。海岸上では、やむことのないドイツ軍の機銃と爆弾にさらされ、腕や足がもげたり、内蔵の飛び出した兵士がそこかしこにおり、上陸作戦の無謀ぶりがうかがえる。そんな中、ミラー大尉は、兵士達をまとめあげて敵のトーチカを落とし、作戦を成功に導く。
その頃、本土では、とある4人兄弟のうち、3人が一度に戦死したという情報が幹部に伝えられる。幹部はリンカーン大統領の書簡を引き合いに出し、一人だけ生き残ったジェームズ・ライアンを戦地から呼び戻すことを決める。
ミラー大尉は、この作戦を任されることになり、ホーバースをはじめ、敬虔なスナイパーのジャクソン(バリー・ペッパー)、通訳係のアパム(ジェレミー・デイビス)ら7人を連れ、ライアンを探すという、あてのない危険な任務に出る。
行軍の過程で、ミラーは、遭遇した敵の手により、一人、また一人と隊員を失っていく。生き残った者の中には、任務の理不尽さに対する怒りと、自分たちの苦労を知らずに一人だけ戦地から救出される僥倖を約束されているジェームズ・ライアンに対する恨みを募らせていく者もいた。
航空隊からの情報収集などを経て、彼らはついに、敵地に取り残され、少ない弾薬で抵抗を続ける少数部隊で奮闘するライアン(マット・デイモン)を発見する。
ライアンは、ミラーから3人の兄弟の死を知らされるが、自分だけ戦地を去ることなどできないと言って、仲間とともに戦地に残ることを主張する。ミラーは彼らが対峙しているドイツ軍の掃討作戦に荷担することを決める。
敵をおびき寄せるまでのつかの間の弛緩した空気の中、ミラーとライアンは思い出話に花を咲かせ、心を通わせる。まもなく、戦車を筆頭にドイツ軍が現れ、橋頭堡での死闘が始まる。
軍事教本に忠実に従って作り出した「くっつき爆弾」を使って、ミラーたちは戦車を無力化させることに成功するが、ドイツ軍の兵器は強力で、戦車に群がる米兵が、機銃により一瞬で肉塊と化す。さらに敵の援軍が加わり、ミラー達は橋の反対側への撤退を余儀なくされる。
なんとか橋を爆破し、彼らの進軍を止めようとするミラーだったが、そのミラーの胸を銃弾で貫いたのは、ミラーが行軍中の戦闘でとらえて命を助けたドイツ兵だった。そのドイツ兵は、最初に出会った連合軍に降伏せよ、というミラーの命令を無視して、ドイツ軍側に復帰していた。それを見た非力な通訳係のアパムは、ついに銃の引き金に手を掛け、初めて敵兵を射殺する。
息も絶えだえになったミラーは、もうろうとする意識の中、敵軍の戦車に拳銃を放つ。全く無意味な抵抗のはずだったが、突如、彼の発砲とともに戦車が炎上する。それは彼の拳銃によるものではなく、連合空軍の爆撃によるものだった。ついに援軍が到着したのだ。しかし、ミラーはライアンに見守られながら息を引き取る。彼の手の震えが、ようやく止まる瞬間だった。

その後の戦争映画にも影響を及ぼす大作。見どころが多すぎて、また、書きたいことが多すぎて困ってしまうほどであるが、ここでは2つ書きたい。

観客は、最初に登場した老人は誰なのか、つまりこの8人の中で誰が生き残り、この物語の語り部となっているのかを、気にしながら作品を観ることになる。この演出が、3時間に及ぶ本作に、観客の興味を引き寄せ続けることに一役買っている。途中段階では、奇跡的に生き残るアパムが、最初に登場した老人かと思わせたりもしていて、心憎い。

また、最後にミラーがライアンに告げる、「earn this」という日本語にしがたい台詞も印象に残る。「ムダにするな」とか「糧にしろ」とか訳されているが、どうこの一連のできごとを自らの血肉にするのかはお前に任せたぞ、という、本職が教師だったミラーらしい、愛情のこもった言葉なのである。ライアンはこの言葉を胸に、幸せな家族を築くが、それでもなお、ミラーの教えに従うことができたのか、迷い続けていたのだ、ということが、後半の独白で示される。この辺りも観る者に深い感銘を与えている。

【5段階評価】5

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