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2011年9月 5日 (月)

(549) 母なる証明

【監督】ポン・ジュノ
【出演】キム・ヘジャ、ウォンビン
【制作】2009年、韓国

息子にかかった殺人の嫌疑を晴らすために奔走する母親の運命を描いた作品。

記憶力に障害のある息子、トジュン(ウォンビン)を持つ母親(キム・ヘジャ)。ある日、トジュンは、友人のジンテ(チン・グ)に誘われて飲み屋に行くが、すっぽかされ、飲み屋から一人、家に帰る。酔っ払いながらふらふらと歩いていると、前を歩いている女子高生を見つけ、「一杯飲もうよ」と声をかける。しかし、女子高生はトジュンを無視して真っ暗な路地に引っ込むと、トジュンに向かって大きな岩を投げつける。トジュンは後ずさりし、その場を立ち去る。
そして翌日。女子高生が住家の屋上の手すりに覆い被さるようにして死亡していた。小さな町の殺人事件に警察も色めき立つが、現場に落ちていたゴルフボールから、トジュンが容疑者となる。トジュンは、ゴルフ場の池で拾ったボールにマジックで名前を書いていたのだった。
息子の無実を信じる母親は、あてにならない警察の捜査にがまんできず、自ら情報収集を始める。すると、死んだ女子高生アジョンは、多くの男相手に売春をしていたことが明らかになる。認知症の祖母と2人暮らしで、生活費に困っていた彼女は、男が金を持っていなければ米を持ってきても体を売っていた。そんなことから、米餅少女と呼ばれていた彼女は、撮影時のシャッター音を消した携帯、「変態電話」で相手の男の写真を撮りためていた。その携帯電話を取り返そうとしている若者がいたりもして、犯人探しは混迷を極める。
母親は、トジュンの記憶を呼び起こさせるため、拘置所の面会に行く。しかし、トジュンが思い出したのは、5歳のときに、母親が自分に毒を飲ませて殺そうとしたことだった。昔の無理心中未遂の記憶が息子に残っていたことにショックを受ける母親だったが、ついにトジュンが事件の日、現場で老人を見かけたことを思い出す。母親がアジョンの祖母から携帯を入手し、その写真をもとに、その老人を特定する。それは、母親が会ったことのある廃品回収屋だった。
母親は廃品回収屋の住む小屋を訪ね、鍼を打ちましょうか、とボランティアのふりをして、現場で何があったのかを聞く。老人は、事件のあった場所にある空家の中にいて、アジョンとトジュンのやりとりをすべて見ていた。
トジュン「男は嫌い? 」
アジョン「ねえ、私を知ってる? 」
トジュン「いや」
アジョン「知ってるの? 」
トジュン「知らない」
アジョン「なのになぜ? 私は男が嫌い。だから話しかけないでバカ野郎」
バカと言われるとキレてしまう性質を持ったトジュンは、投げ付けられた岩を少女に投げ返し、それが少女の後頭部を直撃してしまったのだ。トジュンは倒れて動かなくなった少女を屋上まで運んで行ったのだと言う。
母親は「トジュンは犯人じゃない。すぐに釈放して再捜査するって」と絶叫すると、老人は「ちゃんと捕まえたと思ってたのに。ダメだ、俺が通報するしかない」と言って電話の受話器を手にする。母親は、落ちていたスパナを手にして老人の頭を滅多打ちにして殺害すると、小屋に火を放って立ち去る。
その後、警察が母親の家を訪ねてくる。殺人の動かぬ証拠を突きつけられるかと思いきや、彼は「真犯人が見つかった」と告げる。アジョンの恋人でダウン症の気(け)のある男、ジョンパルが逮捕されていた。服についていた血が決め手となったという。彼は「アジョンの鼻血だ」と言ったらしいが、警察は言い訳としか受け取らなかった。しかし、母親は知っていた。アジョンが鼻血を出しやすい体質であることを。逮捕された男は明らかに無実だった。母親は彼に面会し、「あなた、両親はいるの」と尋ねる。ジョンパルは首を横に振った。ジョンパルには彼の無実を無条件に信じ、彼を守ろうとする母親はいない。それを聞いて母親は涙が止まらないのだった。
トジュンは釈放されるが、迎えに来たのは母親ではなく、ジンテだった。トジュンは、ジンテの車で、廃品業者の焼けた廃屋の横を通りかかり、そこに立ち寄る。家に戻ったトジュンは、母親と食事をしながら、なぜジョンパルが死体を屋上に上げたのかを想像する。トジュンは「たぶん、よく見えるように、アジョンが血を流してるから早く病院に連れてけって、だから皆が見えるところに運んだんだ」と推理する。しかしそれは、トジュン自身の行動だった。母親は、奥歯をかみしめてトジュンの言葉を聞くしかなかった。
その後、トジュンは、地元の親孝行バスツアーに母親を行かせる。待合室でトジュンは、「渡すものがある」と母親に告げる。悲しそうな目で母親を見つめた後、彼はやけただれた鍼の道具箱を母親に手渡す。母親はそれを受け取ってバスに乗り込むと、いやなことを忘れるという太もものツボに自ら鍼を打ち、参加したツアーのバスの中で繰り広げられている、乗客の女性たちの踊りの中に入り込んでいくのだった。

冒頭、草原にたたずむ素朴ななりの老いた女性が、突然、音楽に乗って一人で体をくねらせ踊り始める。きわめて奇異で印象的なオープニングで、観客はいやおうなしに、この映画の中で語られるであろう狂気に身がまえることになる。そして、どこか常軌を逸した人々が織りなす、ありふれた日常のようでそうではない物語に巻き込まれていく。
母親とともに、トジュンの無実を信じていた観客は、廃品業者の老人の話に身の毛もよだつ衝撃を受けることになる。この純朴な親子と思われた二人が、傍目にはただの殺人犯であるという展開には、評価が分かれる向きもあるようだが、個人的には、このどんでん返しはアリである。
そして母親は、息子が5歳のときの記憶を取り戻して「母さんは僕を殺そうとしたでしょ」と言ったときのように、いつ息子が、アジョンを屋上に担ぎ上げたのが自分自身であり、母親が廃品業者を殺したということに気づくのか、という疑心にさいなまれながら生き続けていくしかないのである。じわっと来る、映画らしい映画だった。

【5段階評価】4

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