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2011年3月 6日 (日)

(372) イキガミ

【監督】瀧本智行
【出演】松田翔太、山田孝之、成海璃子
【制作】2008年、日本

命の尊さを国民に再認識させ、国家の繁栄を促すことを目的として、18歳から24歳の若者を1000分の1の確率で死に至らしめる、国家繁栄維持法が施行された架空の世界で起こる物語を描く。原作は間瀬元朗の漫画。

作品の中では、メジャーデビューを目指す若いミュージシャンや、政治家を親に持つ引きこもりの青年、角膜手術のドナーを待つ盲目の妹を持った兄などが、死を知らせる「イキガミ」をもらう。イキガミには、24時間後の自分の死亡時刻が記されている。
イキガミを届ける公務員、藤本(松田翔太)は、そのたびに数々の悲劇を目の当たりにし、この法律に強い違和感を覚えるようになるが、本作では、この法律の撤廃を密かに狙う人々の存在が明かされるものの、その実現には至らない。

山田孝之や成海璃子のほか、笹野高史や柄本明、塩見三省など、名優が脇を固めた豪華なキャストである。しかし、残念ながら、この映画には全く感動できなかった。その原因は、何と言っても、この国家繁栄維持法の必然性のなさが際立っているためである。漫画ならこの半ばSFめいた設定も何となく許せるが、映画であれば、もう少しきちんと、かつてこんな悲劇が起きたからこの法律が生まれたとか、あるいはあからさまなパラレルワールドであるとか、そういう描写がないと、全く感情移入ができない。
本作では、そういう説明もなく、当然この法律が必要であるかのように話が進み、若者がおびえて死んで行くシーンを、ほら泣け、といわんばかりに描写する。しかし、観客としては、終始、「そもそもこんな法律いらないじゃん」という冷めた気持ちにしかなれず、典型的な涙の押し売りに辟易するばかり。
「死の恐怖を感じることで、命の尊さを知る」とかいう法律の能書きも、別に死の恐怖なんて、こんな法律がなくたって、交通事故とか大地震とか、いくらでも感じることはあるわけで、何ら説得力がない。
柄本明は、本作では国家繁栄維持法を所管する役所の参事官役。「リアル鬼ごっこ」では、全国の佐藤さんを殺すという計画を遂行する王様の役を演じており、国家の非常識な制度の権化という、奇妙な共通点がある。
笹野高史はこのブログで扱っただけでも、「犬と私の10の約束」や「母べえ」、「武士の一分」、「剣岳 点の記」など、様々な映画に出演している名優。塩見三省も、「旭山動物園物語 ~ペンギンが空をとぶ~」(これには笹野高史も出演)や「Love Letter」、「ゲロッパ!」、「壬生義士伝」などをこのブログで扱った、これまた映画出演の多い俳優さん。

【5段階評価】2

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