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2010年4月 7日 (水)

(104) 厨房で逢いましょう

【監督】ミヒャエル・ホーフマン
【出演】ヨーゼフ・オステンドルフ、シャルロット・ロシュ
【制作】2006年、ドイツ・スイス

軽妙な邦題からすると、料理にしかとりえのない冴えないシェフが、人妻に恋をするラブコメディかと思いきや、とんでもない人の欲望を描いた作品。

エロティック・キュイジーヌ(官能料理)と名付けた料理で、店は数ヶ月先まで予約で一杯というシェフ、グレゴア(ヨーゼフ・オステンドルフ)。オープニングは、彼が鴨の毛をむしりとりながら鴨に話しかけるシーンで始まる。その後の調理のシーンにおける彼の表情は、興奮・愉悦に満ちており、料理に対する彼の異様な執着が伺われる。
そんな彼のひそかな楽しみは、カフェのウェイトレス(シャルロット・ロシュ)を眺めることだった。グレゴアは、ひょんなことからそのウェイトレスと知り合う。女の名はエデン。彼女はダウン症の娘、レオニーと、夫のクサバー(デービト・シュトリードフ)と3人で暮らしていた。
グレゴアが娘の誕生日に持ってきたチョコレートケーキの味に魅了されたエデンは、あの料理は官能を刺激する、あの料理を食べれば、子供を授かる気がする、と夫に告げる。そして彼女は、グレゴアの店を訪れ、彼が試行中の料理を食べさせてもらう。そのときの彼女の食べ方が、普通のようで欲をむき出しにしたような食べ方なのだ。ただ単に音を立てて食べるでも口いっぱいにほおばるでもないのだが、遠慮という人間の持つ理性を失ってしまっている。「千と千尋の神隠し」で、千尋の両親が店の料理を食べまくってブタになってしまうシーンを彷彿とさせる。
その後も彼女は、無遠慮に彼の元を訪れては、料理をふるまってもらうようになる。グレゴアはエデンに恋心を抱いているが、決してそのことを口にしない。彼にできるのは料理を振る舞うことだった。そんなグレゴアに対して、エデンは「あなたの料理が食べたいのじゃないの。あなたが友達だから会いに来ているの」などと言ったり、夫や家族の話をしたりする。とても罪深い。
そして彼女は本当に妊娠する。エデンの夫・クサバーは喜ぶが、飲み仲間は彼女がグレゴアと密会を重ねていることをとうの昔に知っていた。よからぬ噂を聞きつけたクサバーは激怒し、グレゴアの家に乗り込むと、ワインセラーを破壊する。それがきっかけとなり、グレゴアは銀行の融資を断られ、店をたたむ羽目になる。
それでもグレゴアは怒らない。街を出て行くという日、グレゴアはクサバーとエデンの家を訪れる。「エデンと話ができないか」とグレゴアに尋ねられたクサバーは逆上し、グレゴアに殴りかかる。林の中に逃げるグレゴア。追うクサバーは、「3つ数えるから出てこい」と叫ぶ。
グレゴアは、もういろいろなものから逃げるのはやめようと心を入れ替える。そして、姿を現す。彼は木に登って隠れていた。そしてそこから落下。落ちた先にはクサバー。クサバーは、下敷きになって死亡。
「これが彼の死んだ顛末です」とグレゴアが述懐する法廷のシーン。ここまではずっと回想だったのね、とここで分かる。刑務所に入るグレゴア。出所後、彼は元の店の給仕とともに、屋台式の店を営んでいた。エデンは二人の子供を連れてそこを訪れ、グレゴアとの再会を喜ぶ。にこやかに答えるグレゴア。

ここで映画は幕を閉じるが、このラストシーンでも、エデンの無邪気さの奥に潜む罪の深さが際だった。

【5段階評価】4

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